夜凍河 26



 ゲスト:古藤俊子


 写真:古藤俊子









散歩  古藤俊子 
  旅に出たいけれどお互いもう若くはないね…会う約束はないまま電話を切った。
詩の話題はどちらが先に中断してしまったのか。
かるくしようとして重くなる‥その逆も‥朝はいつも境界線。
 民家の前で伊勢撫子の手入れをしている人に挨拶。正確には花の名はその人が
教えてくれたのだ。絹布を細く裂いたような長い花弁が垂れ下がる様は可憐という
より妖気を感じる。奇想の絵師若冲が好みそうな形状だが彼が描いたかどうか‥ 
 五月末に滝さんと御一緒した神戸ファッション美術館(大正の夢秘密の銘仙物語)
大胆な発想、新規奇な色柄で目の保養になったが伊勢撫子柄の着物を見逃してい
たかもしれない。
 滝さん、次の神戸散歩はいつにしましょうか?





おひとりさま  滝 悦子 
  映画やショッピング、喫茶店でも居酒屋でも画廊でも、ふつうにひとりで入って
いたから、最近のお一人様の流行りは不思議。
 昔々、私の周囲は「どうする?あなたが決めて。あなたの言う方でいい」それでいて、
本当は賛成できなかった、の声が回り回って聞こえてきた。やがて不可解とも憐憫
ともつかない表情を見るようになったが、連れ立って動く彼女らに対する私の眼差しと
同じものだったろう。旅など最初と最後は一人でも、意気投合して途中下車、小学生
の遠足について行ったり、雨で乗せてもらったご夫婦が案内役に! 私が観光地を
知っているのは、たいていそういう結果だ。
 この頃はなぜか、見たい・行きたいと思いながら機会をもてずにそのままになって
いたあれこれを、誰かが話題にする。飛びつく。神戸ファッション美術館もそう。
またご一緒させてください。


 

                  




    

                

 

          陽
                        
 古藤俊子

    
     浮御堂で
      まりついて
      浮御堂からまり落とし

     蘆の葉さきで
        波のしぶきが震えています

     履きつぶれた下駄ひとつ
        赤いちぎれた数珠ひとつ

     泣いているのは 
           何処の児え
     行方知れずは
         誰の児え

     浮御堂から身を投げて
     紅いまりひとつ浮かんでいます

     空を染める陽のように
           湖
(うみ)に沈む陽のように

     やぶれた心臓
            流れています




                              











     夜凍河26 2025.12
 古藤俊子  陽  虹彩  弦(いと)
 滝 悦子  白い襟





    

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