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Collection詩集 Ⅱ


小西民子

小西民子1


















































































詩集 
ピクニックストリート

小西民子
編集工房ノア 199611

キャベツもなかなか眠れない
キャベツが五十個
キャベツが五十一個
体の中の 遠い所で
春のキャベツ畑が
生まれたみたい  (「眠れない夜」より)
 



    キリン

 夜ノ街ヲ
 キリンガ歩ク

 長イ夜ノ
 遠イトコロカラ
 樹々ヨリモ長イ首ヲシテ

 ワタシハ
 キリンガ歩ク日ハ
 スグ ワカル

 ベランダニ
 ソット出テ

 ユックリト通リスギルノヲ
 ミテイル
 明ケ方ノ手前マデ来ルト
 少シズツ
 葉ヲ茂ラセ
 一本ノ樹ニナル




   風力 2

 あなたは
 タツマキ
 だった
  だった
 わたしを
 マルゴト
 持ちあげて
  マルゴト
 上空へ
  持ちあげて
 あなたの
 コシのはばにわたしを
 ひろげて
  ワタシは
 あなたのはばに
 足をひろげて
 好きから
 はじまる

 荒模様
  好きから
 変わる
 見晴らしは
 クルクル西方が
 見えはじめ

 日の出と日没が
  見えはじめ

  タツマキ
  だった
 あなたがある日
  日没の
 空へ消えた時
 ワタシさかさま
  さかさまに
 落ちたところから
 クラシはじめる
 倒れないで
  ワタシはじめる





   ピチカート広場

 みみずく星は
 木のてっぺんで
 春の匂いを
 吸っている
 みんな
 ねむっている頃に

 
 ☆

 夢の中でわたしは
 ちゃんと
 空を飛べるようになりました

  


 桜の花が
 満開で
 なんだか
 そのへんが
 ぶわーっと
 膨張している

  


 母親は
 ワニやフラミンゴ
 ベンガルトラやペンギンを
 ぞろぞろ
 つれて帰る
 動物園の帰り道

  


 わたしの部屋の
 天井を
 オープンカーのように
 開けてゆく
 五月の風

  


 モモンガ入荷シマシタ
 アト一匹ニナリマシタ
 二匹入荷シマシタ
 アト一匹デオシマイデス
 五匹最終入荷シマシタ

  


 部屋中
 春だらけにして
 わたしは
 野原のように
 ねそべっている

  


 どこかで
 だれかが
 さやえんどうの
 すじをとっています

  


 世界中の人が
 ねむっている
 深い夜
 ポトリと
 手紙を
 ポストに
 入れる人がいる

  


 犬の散歩をする人が
 闇のむこうから
 明るい場所を
 ひとまわりして
 闇のむこうへ
 帰ってゆく

  


 秋の
 朝
 赤いポストが
 ありました

 遊びに行ってもいいですか

 
 ☆

 ほほづえをついて
 一日をすごすことが
 できる
 この次は
 バグダット・カフェの
 窓際のテーブルがいい
 ピアノがきこえたりして
 日が暮れる

  


 ベランダに雨がふきこんで
 すっかり濡れている

 水音に消される
 わたし

  


 長い夜のそばで
 キノコを
 いためています
 お塩をふります

 私たちのパジャマは
 おそろいです

  


 青い闇の入り口に
 灯がともりはじめる

 五線譜に わたしを並べてゆく
 あなた

  


 ひろげましょう
 ひろげましょう
 思い切って
 ひろげましょう

  


 アリスの樹には
 葉っぱがない

  


 元気?
 今、何をしているの?
 これからどこへ行くの?

  

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